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競馬場を舞台、レースをドラマとすると、競走馬はタレント、馬名は芸名(中央・地方競馬会や種牡馬協会に正式登録されている)、厩舎は劇団、そして馬主はタレントの経理をまかなっている芸能プロだと考えることができます。芸能プロにとっては、金の卵であるタレントの名前を承諾なしに他の商品に使われたのだから、パブリシティー権が侵害されたとするのは当然で、それが認められたのも当然です。G1勝ち馬でなくG1出走馬としたのは、ナイスネイチャのように「G1を勝っていないが非常に人気の高い馬」を対象外にすることができないからでしょう。また、ネームバリューのある名前でないと使って旨味がないし使われて実質的な損害も起きないわけだから、対象を人気馬に限定したのも仕方ないことでしょう。ソフトの制作・販売の差し止めは実質的な金銭の損害につながり、馬主側がこれまで受けた損害よりも遙かに大きい損害になるのだから棄却は当然で、この判決による社会的信用の失墜を考えると、支払い命令が請求金額の20%〜30%というのも妥当なところです。
でも、この訴訟はどっちもどっちという気がします。
テクモは、金額面で折り合いがついた馬主相手には現在までにも使用料を払っていたらしく、無断で馬名を使ったというよりも、使用承諾を得ていない馬名も使ってしまったと言った方が正確でしょう。
テクモが事前に提示していた金額が妥当なものか分からない以上は、「勇み足だった」という程度のコメントしかできません。もしあまりに低いものであれば、パブリシティー権が適用されないと考えていたとしても、「競走馬は馬主の所有物」という競馬関係者ならば考慮して当然のものを無視したのですから、馬主さん達が気分を害されて当然です。逆に妥当な金額であったとすれば、馬主側が直接的な利益の追求に走りすぎたということです。
どちらにせよ、馬主側の対応も大人げないものです。馬主の存在が成り立つのは、所持する競走馬の勝ったレースの賞金や種付け料、セリでの仔馬の売値といった実入りがあるからです。そしてこれらは、競馬を見に行く人が入場料を払い馬券を買うから成り立っているのです。エンターテイメントとしての競馬でも、ギャンブルとしての競馬でも、参加者を増やすためには宣伝は重要なことです。また、一部の種牡馬に人気が集まる昨今では、宣伝をしてでも種付け数を増やさないと、維持費をまかなうことが困難な種牡馬もいるでしょう。
これらは、たとえゲーム購買層と馬券購入層や繁殖牝馬馬主の層とが異なっても関係ないことです。少なくとも自分たちの支払うコストなしで宣伝してもらえるのですから、効果云々の前にやってもらったもの勝ちというものです。そもそも人気があるからこそゲームに登場できるのであって、「使われているうちが花」という面もあります。それらを考えると、ここまで態度を硬化させなくともという印象を強く受けます。
これで新作以降に今回請求を認められた競走馬が実名で登場することはなさそうですし、他のゲームでも実名で登場する馬は減少しそうです。ユーザとしては、競走馬が実名で登場しない競馬ゲームは興味が半減することで、残念な事態になったものです。